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空のインフラ研究所

旅客機の乗務員休憩室はどこにある?

長距離便の乗務員が交代で眠る休憩室は、客室の天井の上だけでなく、床下の貨物室に置かれることもあります。同じ777でも機体によって場所が分かれるのは、休憩室の付け方が違うからです。夜行バスの床下の仮眠室と比べながら、休憩室の場所と、貨物室に積み込む仕組みを断面図で説明します。

更新 2026年10月 読了 9分

この記事は、YouTube チャンネル「空のインフラ研究所」の動画を文章にしたものです。 YouTube で動画を見る

夜行バスには、床下の前輪と後輪のあいだに運転手の仮眠室を備えた車種があります。では、長距離便の乗務員はどこで眠るのか。答えは、客室の天井の上と、客室の中と、床下の貨物室です。しかも同じ777でも、休憩室が天井の上にある機体と床下にある機体があり、場所を分けているのは休憩室の付け方の違いです。

休憩室が置かれる3つの段

旅客機を輪切りにすると、上から3つの段に分かれます。客室の天井より上の空間、客席の並ぶ客室、そして客室の床の下にある貨物室です。家にたとえるなら屋根裏と居間と床下の物置で、乗客が目にするのは真ん中の段だけ。

旅客機の断面図。上から天井の上、客室、貨物室の3段に分かれ、客室の中の一部に休憩室が描かれている

乗務員の休憩室が作られてきたのは、3つの段すべてです。客室の中に置く形は、客席の一部を休む場所として使います。

機種ごとに見ると、場所はばらばらです。エアバスのA330は、休憩室を後ろ側の貨物室の中に置けます。ボーイングの787だと、休憩室は客室の天井の上。エアバスのA350は、操縦士の休憩室と客室乗務員の休憩室を、どちらも天井の上に置いています。天井の上か床下かは、メーカーで決まるわけでもありません。

3つの段と機種ごとの場所を動画で見る(0:33〜)

天井の上に部屋を作るしくみ

人が入れるほどの空間を、天井の上にどうやって作ったのか。ボーイングの777で見ると、休憩室があるのは荷物棚のさらに上と、胴体のいちばん高い所とのあいだです。胴体のいちばん上の真ん中には、もともと電気の配線や空気を送るダクトが通っていました。ボーイングはそれらを真ん中から脇へ寄せ、空いた場所に休憩室を収めています。

777の断面図。天井の上の部分に配線とダクトが描かれ、その下に荷物棚、客室、貨物室が並ぶ

天井の上を休憩に使う考えは、それほど古くありません。ボーイングの747で天井の上に休憩室を置く申請が出されたのは、1986年のこと。それまでの旅客機では、休憩に使われたことのない場所でした。

機体を横から見ると、天井の上の休憩室は前後に分かれています。操縦士用が機体の前側で、客室乗務員用はそれより後ろです。777と787は、どちらもこの分け方です。

機体を横から見た図。天井の上に、前側の操縦士用と後ろ側の客室乗務員用の休憩室がある。777と787の文字

天井の上の休憩室の作りを動画で見る(2:26〜)

乗務員は交代で眠る

休憩室は、乗務員が交代で使います。国土交通省の検討会のとりまとめによると、客室乗務員は食事のサービスが終わると、ほとんどの場合2つのグループに分かれ、片方が休むあいだにもう片方が客室で働きます。操縦士が休むのは、操縦席に座っていない時間です。

日本航空の旅の情報サイト「OnTrip JAL」でも、客室乗務員が、長距離便の機内には仮眠をとるスペースがあると話しています。長い便の乗務員は、全員が起きたまま働き続けているわけではありません。

同じ777でも床下に休憩室がある

天井の上にこれだけの部屋を作れるなら、床下の休憩室はいらないように思えます。ところが、同じ777でも、床下の貨物室に休憩室を置く改修が、米国の連邦航空局(FAA)に認められています。そのうちの1つは、前側の貨物室に積む型で、大きさは貨物のコンテナ3個分。手がけたのは、機体を作ったボーイングとは別の会社でした。

777を2機並べた図。上の機体は天井の上に、下の機体は床下の貨物室に休憩室がある

機体の大きさで決まるなら、同じ777の中で場所が分かれることはないはずです。分かれるのは、休憩室の付け方が違うからです。休憩室は、どの機体にも同じ場所に付いている部品ではありません。メーカーが用意した仕様の中から選んだり、使い始めた機体にあとから改修で足したりする設備です。777なら、ボーイングが用意した天井の上の休憩室を選ぶことも、別の会社の改修で貨物室に積むこともできます。エアバスのA330の資料も、休憩室を付けるかどうかは機体の仕様しだいだと書いています。

同じ777で場所が分かれる理由を動画で見る(4:21〜)

天井の上に置く利点として挙げられていること

ボーイングは2003年、777で天井の上に置く休憩室を発表したとき、長距離便の悩みを挙げました。運賃を生む客席や貨物の場所を削らずに、乗務員が休む場所をどう作るか、という悩みです。発表の頃、操縦士は操縦室のすぐ後ろの休憩室か、ビジネスクラスの座席で休んでいました。乗務員が座っているあいだ、その座席は乗客に売れません。休憩室を天井の上に移せば、その分の客席と貨物室を空けられる、というのがボーイングの説明です。

ボーイングは特許の説明でも、航空会社は床下を貨物に、客室を乗客に使いたいので、休む場所として残るのは客室の上だ、と書いています。ただし、天井の上の休憩室はどの機種の資料にも載っているわけではありません。エアバスがA330について出している資料の図にも、天井の上の部屋は描かれていませんでした。

床下の休憩室への入り方と火への備え

床下の休憩室は、貨物と壁一枚で隣り合う部屋です。A330などの床下の休憩室に乗務員が入るのは、貨物室の扉からではなく、客室の中にある階段室からです。階段室の床にあるハッチを開け、階段を下りた先が休憩室になっています。

機体を横から見た図。客室の階段室からハッチを下りると床下の休憩室があり、警報、煙を感知する装置、火を消す装置、酸素の装置が描かれている

ふだん使う階段とは別に、客室へ直接開く非常用のハッチもあり、逃げ道はどれも貨物室を通らずに客室へ戻れるように作られています。休憩室の壁のうち貨物室と接する壁は、貨物室の火災に耐えなければなりません。貨物室で火が出れば休憩室の中で警報が鳴り、休憩室には煙を感知する装置、火を消す装置、酸素の装置も備えます。休憩室を使うのは飛行中だけで、離陸と着陸のときには使いません。

床下の休憩室への入り方を動画で見る(7:29〜)

眠れる設備があると、働ける時間が変わる

休憩室の作りは、乗務員が働ける時間にも関わります。日本では、操縦士の人数と仮眠設備の等級で、乗務できる時間の上限が変わります。国土交通省の「航空機乗組員の乗務割について」では、操縦士が2人の便の上限は9〜10時間です。操縦士を3人にして13時間以上乗務する便には、操縦席や客室から切り離され、平らな姿勢で眠れる「クラス1」の仮眠設備がある機体を使います。リクライニングの座席は、それより下のクラス2やクラス3。同じ3人の編成でも、上限はクラス1なら17時間、クラス3なら15時間で、休む設備が良いほど長く働ける仕組みです。

国土交通省の資料によれば、日本の航空会社の欧州線や北米線の機材には、操縦士の仮眠設備があります。バスにも同じ考え方の決まりがあり、運転手2人で乗務して車内にベッドを備えていれば、拘束時間を20時間まで延ばせます。国の基準も、運転手の仮眠施設の例に、車両の床下の仮眠施設を挙げていました。

休む設備と働ける時間を動画で見る(8:52〜)

コンテナ1個分の寝室

話を床下に戻すと、エアバスがA330に用意した床下の休憩室は、貨物のコンテナ1個分の大きさで、最大で7人が休めます。コンテナが並ぶ貨物室の一角に、寝室が1つ収まる形。

機体を横から見た貨物室の図。貨物のコンテナの列の中に、コンテナ1個分の休憩室が1つ入っている。最大7人

この寝室は、貨物室から取り外せます。外せばその場所はまた貨物室に戻ります。外したあとも、貨物室としての火への備えを保つ決まりです。

コンテナ1個分の寝室を動画で見る(10:07〜)

荷物と同じ仕組みで積み込む767の休憩室

ボーイングの767には、前側の貨物室に休憩室を積む改修があります。休憩室は、荷物を載せた台を貨物室へ運び込む装置に合わせた台の上に組まれていて、貨物と同じように運び込めます。この改修を手がけた会社が利点に挙げたのは、休む必要のある便だけに積み込めることでした。

機体を横から見た図。前側の貨物室に休憩室があり、機体の下に貨物を積む装置が描かれている

床下を選ぶ理由として資料で確かめられたのは、こうした改修会社が自社の製品の利点として書いたことまでです。航空会社自身が床下を選んだ理由を書いた資料は、見つかっていません。

ボーイングの空港計画用の資料では、767の前側の貨物室は、手荷物を積み下ろす区画として扱われています。預けたスーツケースを積み下ろすのと同じ貨物室に、荷物と同じ仕組みで寝室を積み込むことがあるわけです(休憩室を積んだ機体で、同じ便の手荷物がどこに積まれるかを書いた資料はありません)。

767の休憩室の積み込みを動画で見る(11:13〜)

夜行バスの仮眠室と並べると

バスの仮眠室は床下の前輪と後輪のあいだにあり、夜行用のバスの装備として作られたものです。日野といすゞの資料では、昼の高速路線や貸切の仕様には付いていません。

左に夜行バスの床下の仮眠室、右に天井の上に休憩室がある旅客機を並べた図

旅客機の休憩室は、天井の上にも床下の貨物室にもあります。夜行バスと同じく床下だろう、という予想は、床下に休憩室を置いた機体では当たり、天井の上に置いた機体では外れます。同じ機種の中で場所を分けているのは、メーカーの作りを選ぶか、あとから改修するかという付け方の違いです。

この記事の範囲と資料

休憩室の場所は、機体ごとの仕様と、あとからの改修で決まります。同じ機種でも、乗った便の休憩室がどこにあるかは分かりません。日本の航空会社について、機体ごとの休憩室の場所は公式の資料では確かめられませんでした。777と767の床下の休憩室は、機体メーカーとは別の会社が改修で取り付けたもので、FAAが認めたものです。参照した資料は、下の「出典・参考」に載せています。

出典・参考

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